help center
トップ > ブログ一覧 > ビジネス対談 ソフトバンクモバイル株式会社 松本徹三氏2

ビジネス対談 ソフトバンクモバイル株式会社 松本徹三氏2

失敗したら死ぬ、という覚悟でビジネスに臨む

渡部 松本副社長の多様なキャリアの中で、ご苦労は多かったかと思います。失敗されたご経験について、お伺いしたいのですが。

松本 それ程大きな失敗はなかったのですが、それでも無数の失敗をしています。一番辛かった経験と言えば、私が伊藤忠商事アメリカ会社に勤務していた当時、ベンチャービジネスを自ら手がけて失敗したときのことです。当時のアメリカでは「AT&Tが解体され、通信事業が新しくなる」「通信とコンピューターが融合する」ということが同時に起こっていました。 また、当時の日本では殆どなかったベンチャービジネスというものが大きな脚光を浴びつつあった時でもありました。ですから、もともと通信機器が担当だった私は、「電話システムは必ずコンピュータ化され、種々のオフィスシステムと合体する」と考え、その分野に注力していたベンチャー企業に投資したり、自分でベンチャーを起こしたりしました。しかし、一言で言えば、時期が早過ぎた為に必要な要素技術が整っていなかったのと、ユーザーの受け入れについての読みが浅かった為に、やる事成す事全てが上手くいかず、自分で作った会社も結局立ち行かなくなって、会社の上司からも部下からも馬鹿にされ、ほうほうの態で日本に帰ってきました。惨めだし、恥ずかしいし、その後は社内で何をしようとしてもハンディキャップを負って戦わねばならないし、その頃が自分のビジネスキャリアーの中でもどん底だったと思います。

渡部 なるほど。しかしアメリカでは、失敗体験から次の事業を組み立てるという、失敗を許容する、むしろ失敗を賞賛する文化がありますよね。そのように考えれば、その失敗から学んだことは大きかったのではないですか。

松本 もちろんです。人は成功体験よりはるかに多くのことを失敗の体験から学びます。だから、今僕が若い人たちを見るとき、失敗の体験のない人には不安を感じます。ただし、失敗は出来る限り小さなものが良いと思っています。大きな失敗をすると、ときに二度と這い上がれない程の状況に追い込まれますからね。

私は父が松下電子工業に勤務していたこともあり、今でも松下幸之助さんを尊敬していますが、子供のときに父から聞いた彼の言葉の中で、一つ非常に印象に残ってるものがあります。その頃、住友銀行の磯田頭取が、「向こう傷を問わず」と言って若い人達を鼓舞し、「硬い銀行家には珍しい傑物」と誉めそやされていました。しかし、その時に松下さんは近しい人にこう漏らしたそうです。「私はそうは思いまへんな。傷を負うたら死ぬんですわ。今仕事をしているのは、たまたま生き残った運のええ人達なんですわ。死んでしもうたら、気の毒やけど、もう何も出来まへん」と。

私はこの言葉に心を打たれました。「戦わなければ勝利は得られない。しかし、失敗したら死ぬ、常にそういう覚悟で戦いなさい」という意味です。いつもそう考えていたら、迂闊には戦えない。甘い考えは一切もてない。失敗したら、それまでに得た全てのものを失うのですから。

2